●あったらしい童話~そのいち~
いっしゅん、王様の左の目の下が
「ぴくん」とうごきました。
王様のふくをつくった
しょくにんのはなのあなが
ひろがりました。
王様のすぐそばにいた
けらいたちは
みんなどこかとおくのほうを
じっと見ています。
さけんだ男の子の
すぐうしろにいた
男の子のお父さんは
おおいそぎで
男の子の口を
手でふさぎました。
男の子がさけんだとき
ほんのいっしゅんだけ
まわりのおとなたちぜんいんの
うごきが
とまったようにみえました。
でも
ほんのいっしゅんだったので
とまっていないようにもみえました。
おとなたちには
男の子のこえが
ぜんぜん
きこえなかったのでしょうか。
きこえていたけれど
男の子は「ばか」だから
王様のふくが見えなかったのだ
とおもって
きにしなかったのでしょうか。
男の子がさけぶまえと
なにもかわったことは
ありませんでした。
みんな
くちぐちに
「なんてすてきなふくだろう。」
「わたしもほしいくらいだわ。」と
王様のふくをほめました。
ただ
男の子の口をふさいだ
お父さん手だけが
ずっと
「ぶるぶる」とふるえていました。
そして
つぎの日の
あさがきました。
「王様は、はだかだっ。」と
さけんだ男の子と
その子のお父さんと
その子のお母さんと
その子のおじいさんと
その子のおばあさんと
その子のいもうとと
その子のかっていた犬が
町からいなくなっていました。
いそいで
ひっこしをしたのでしょうか。
けむりのように
とつぜんきえてしまったみたいに
いえの中のかぐごと
どこかへいってしまったのです。
きんじょのおとなたちは
だれも男の子のかぞくの
はなしをしませんでした。
まるで
男の子のかぞくが
はじめから
町にはいなかったかのようです。
そして
なんにちもすぎて
きせつがかわりました。
冬がきました。
王様は
パレードのときにきていた
ふしぎなぬのをつかって
ふくをつくったしょくにんに
こんどは
冬ようのふくをちゅうもんしました。
そして王様は
冬ようのふくは
「ふしぎなぬのはつかわないで
ふつうのぬのでつくるように。」と
しょくにんにいいました。
王様の
冬ようのふくは
ふつうのあついぬのと
ふつうのけがわでできていて
だれが見ても
とてもあたたかそうでした。
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